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「M&Aによる事業承継講座」その19

クロージング(決済)におけるポイント

クロージング(決済)におけるポイント

クロージング手続きを行う上で重要になるポイントについて、解説していきたいと思います。

クロージングとは?

買手側から売手側への譲渡代金の支払いをもってM&Aを終了させる手続きをさす「クロージング」。

株式譲渡によるケースは支払いに加えて、売手側から買手側へ株券や株主名簿、そのほかの重要物を引き渡す作業も含まれます。

M&Aスキームの中で、最も利用されている「株式譲渡」による M&Aを成功させるためには、最終プロセスであるクロージング(決済)手続きを円滑に進める必要があります。

クロージングに先行する前提条件

クロージング手続きへと進む前に、行うべき必須の前提条件というのがあります。

それは主に、「この条件が満たされないと、クロージング手続きが行われない」といったものです。

そのため前提条件の設定には、注意すべきポイントがいくつかあります。

重要なことは、 M&Aは時間との勝負ですので、実施すべき前提条件の範囲を限定し、なおかつ明確にしておくことです。

またその内容についても、具体的・客観的なもので、当事者のどちらか一方に偏った主観や思い込みのようなものは、排除しておく必要があります。

具体的な前提条件の内容と注意ポイント

クロージングの前提条件で、一般的なものについて内容や注意すべきポイントを見ていきます。

表明保証した事項の正確性

M&Aで開示した情報も含め、すべての情報が、真実かつ正確であると「最終譲渡契約」で表明保証したものが、その通りであることの確認がとれているか。

契約事項の実行性

クロージングまでにクリアすべき義務事項は実行されているか。

業務上の許認可の取得

M&Aを行う上で必要とされる行政許認可の取得や届け出は実行されているか。

独占禁止法上の届出等

M&Aの規模によっては、独占禁止法の規制の対象(買手側企業の国内売上高が200億円超で、かつ売手側企業の国内売上高が50億円超の場合)になる。その場合の必要な届出は行われているのか。

重要な役員や従業員から同意は得られているのか

M&Aのあとの事業継続のために必要不可欠な役員や従業員の残留か退職かの確認・同意はとってあるのか。

クロージングの流れと重要な項目とは

前提条件が確認された後のクロージング手続きの流れは

「株式譲渡承認手続きと最終譲渡契約の締結」→「株券の引き渡しと譲渡代金の決済」→「株主名簿の名義書き換え」→「重要物の授受」→「受領書の交付」

などとなっています。

このなかで重要な項目は、「株式譲渡承認手続き」、「株券、株主名簿の名義書き換え」です。

特に株券と株主名簿の書き換えは、クロージングの成否を左右する重要な項目ですので、これらを中心に見ていきましょう。

株式譲渡承認手続きにおける注意ポイント

中小企業のほとんどが譲渡制限株式ですが、実際に譲渡制限規定を設定しているか登記簿で確認しておきましょう。

承認申請書は、売手側・買手側のいずれが行うべきなのでしょうか。

法令上はどちらからも申請できますが、実務上、売手側が申請することが多いようです。

株券などの引き渡しと売却代金の支払い手続きにおける注意ポイント

売手側が株券発行会社であれば、株券と必要なクロージングドキュメント(決済関連書類)のすべてが揃っているか確認します。

売却代金の振り込みを確認後、これら一式を引き渡します。

株主名簿の名義書き換え手続きにおける注意ポイント

一般的には売手側のほうで名義変更の手続きを行います。

そして原本と相違ない旨の記載された書面に代表者印を押印し、変更後の株主名簿を買手側へ引き渡します。

その他重要物の引き渡し手続きにおける注意ポイント

会社の実印その他の印鑑、カード、通帳、登記簿、受領書などの引き渡し、授受が行われますが、注意すべきポイントとしては、通帳はクロージング日前日までの残高が記帳されたもの、簿記簿も最新のものにすることです。

また、すべて引き渡し、支払い等を終了したあとに、双方が受領書の交付を行うようにします。

株券及び株主名簿について注意すべきポイント

株券や株主名簿などは、クロージングに際して引き渡されるもののなかでも特に重要です。

しかし、中小企業においては、これらに対する意識があまり高くないようです。

現在、会社法では、株券不発行が原則のため、実際、中小企業の多くが発行していません。

ただ、一部企業では、発行する旨を規定していることもあります。

その場合、実際には発行していなくても、引き渡しの際には株券が必要になってきます。

引き渡しすべき株券が発行されていない場合の対応

新たに株券を発行し交付するか、または、定款に記載した発行する旨の規定の廃止を登記する必要があります。

また、株主名簿については、もともと中小企業では、株主の変動があまり行われないため、本来備えておくべき株主名簿がない、あっても必要事項の記載がないといった不備が多いようです。

クロージングに際しては、きちんと株主名簿を作成し、交付する必要があります。

まとめ

クロージング手続きは、個別・具体的な内容が多く面倒なプロセスです。

ただ、クロージング手続きはM&Aの最後の締めくくりとして重要なものです。

事前手続きから重要ポイントを踏まえ、ひとつひとつ確認しながら、確実に実行していくことが大切です。