ホームへ戻る

カテゴリー

新着記事

ここ1ヶ月間の人気の記事

M&A手法の基本知識

M&Aと税金対策② 事業譲渡を詳しく

M&Aと税金対策② 事業譲渡を詳しく

M&Aにおける税金ということで別項にて考え方や基礎を確認しましたが、その中にも出てきた事業譲渡は、一部譲渡と全部譲渡を活用することでまた少しずつ違った様相を見せてきます。中小企業の事業継承においては、この一部譲渡と全部譲渡は使い分けることによって後継者の心理的経済的負担を減らすことが出来るため、これらの特徴を頭に入れておいたほうがいいでしょう。

事業譲渡における税金の概要

まずは、事業譲渡における税金についてもう一度おさらいです。

事業譲渡は基本的に事業の売却となるため、その売却益はそのまま企業の利益となります。

そのため、項目は法人税で税率は30%前後

今までの損益と通算できるため、売却の時期は期首としておくことが望ましいでしょう。

期末としてしまうと対策をとる時間が限られてしまうためです。

また、売却益を株主や役員へ個人の利益へと換算する場合は、所得税がかかることになるため、こちらも要注意といえるでしょう。

一部譲渡と税金

事業の一部譲渡は、完全に相手のことを全く知らないような買い手側企業よりも、むしろ親族や若い役員への代替わりなどを行いたい場合の手法としてよく用いられます。

現状の経営者と後継者との間で、すべての継承をするには時間的経験的に不安である場合や、すべてを継承させるまでには段階を踏みたいといった場合があるためです。

例えば、比較的負担の少ない不動産関連の仕事については現経営者に任せておくなどの方法が考えられるでしょう。

この一部譲渡を行う上では、売却利益を個人保証や担保の解放として積極的に用いていくことが出来ます。

これにより、後継者としては会社の借金を減らすことが出来たり、本来引き継ぐはずだった個人保証という精神的な重みから脱却した状態で会社を後継出来るのです。

こうしたやり取りは、後継者が積極的に安心して仕事に取り組める環境づくりとしては極めて重要なことでしょう。

全部譲渡と税金

全部譲渡については、概要で見た通りの税金がかかってくると考えてください。

譲り渡す事業資産と負債の差額を超えた売却金額が課税対象です。

また、消費税という問題もあります。

売却代金が高額になると消費税の負担も大きくなるため、あらかじめファイナンシャル・スケジュールはしっかりと確認しておくことをお勧めします。

全部譲渡で発生する不確実性

全部譲渡においては、実は多くの点で不確実性が発生しうる場合があります。

例えば、棚卸資産。

これは、常に変動しているためM&A期日までは事前の概算による議論しかできません。

実際の正規金額については、事業譲渡実施日にならないと確定できないのです。

また、会社評価額についても難しい部分があります。

中小企業では「純資産価額方式」と「類似業種比準方式」を併用することで、その企業の価値を決定することが一般的です。

この評価額が、事業譲渡をした場合に大きく変動することがありえます。

さらに事業譲渡では、社名の変更にかかわるすべての契約の再締結が必要です。

事務所の賃貸契約や通信費、さらには不動産の名義変更なども対象となります。

このように、M&Aが終わるときにしか価額がわからず、さらに終わった後もこまごまとしたコストがかかってしまうのが事業譲渡です。

そうした問題に対応すべく、M&Aの期日は期首とし予備費としてのある程度のキャッシュは必ず用意しておく必要があるでしょう。

会社を引き継ぐことの難しさ

継承とは非常に難しいものです。特に後継者とは立場も考え方も違ってくるので、借金や経営に対する意識も異なってくるのではないでしょうか。

うまく事業を後継することが出来た経営者の多くは、そうした違いを乗り越え後継者が経営に集中できるような環境づくりを行っています。

今回ご紹介した、一部譲渡の内容はそうした環境づくりのごく一部だと考えてください。

後継者にとっては、経営者になることは初めての場合が多いのではないでしょうか。

今までの立場とは完全に異なった立場へと移るため、最初のうちは思ったような成果を出せないことも多いでしょう。

また、ほかの企業に買収してもらう場合においても、やはりビジネスは従業員という人によって成り立つもの。

納得して残ってもらったとしても、環境の変化による不安やコミュニケーションの増加などによって、期待されているような成果はなかなか出せないかもしれません。

そのような状況に対してしっかりと対応していくためにも、ぜひゆとりあるスケジュールを引いて計画していきましょう。