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M&Aの注意点を押さえる

M&Aの落とし穴① 時価純資産方式

M&Aの落とし穴① 時価純資産方式

M&Aを行う上でどうしても欠かせないのが、企業の価値を図る方法についてです。企業の価値と一言で言っても何を指しているのかよくわからないという経営者も非常に多いのではないでしょうか。今回は3回にわたって、この企業の価値を見極める方法についてより詳しく見ていくことにします。第一回は時価純資産方式です。この方法は、きれいに数字として出てくるので、まず手始めにと作られることの多い数値といえるでしょう。

時価純資産方式とは

現在の純資産に注目して企業価値や株式価値を評価する方法で、静的な評価として非常によく用いられます。

貸借対照表を基礎にしているため、数字を読む分には過度の専門的な知識が必要ないため、一般的な企業会計を理解できている経営者や会計責任者であれば説明を受けるまでもなく大まかな理解はできるのではないでしょうか。

ポイントとして、未来の期待値が評価に入ってきません

今の企業や今の事業がどうであるのかという数字的な評価がなされると考えてください。

そのため、必ず将来的な評価や期待値が算出される別の手法と組み合わせて議論しましょう。

時価純資産方式のみで話を進めていくのは非常に危険です。

時価純資産方式には種類がある

時価純資産方式は静的な評価であるという話をしましたが、例えば、期初めと期末を比べたら当然数字が違ってくるでしょう。

そうしたいつの数字を使うのかという基準がないとうまく評価できないため、大きく分けて3つのやり方で時価をとらえるようにしています。

① 再調達時価純資産方式

評価対象とする資産や負債をすべてもう一度取得することを前提として評価していく方法です。

つまり、M&Aにおいて、相手の会社を活用せずに自社が自前ですべてを仕入れたらどうなるのかと考えてみましょうということになります。

この評価方法を活用するときは棚卸資産や中古資産などの扱いが少々難しくなりますが、減価償却費を控除するなどの合理的な手法を活用して算出することになるでしょう。

継続的に評価される企業が存続することを前提とした評価方法といえます。

② 清算処分時価純資産方式

この方式は再調達時価純資産方式とは完全に逆で、保持する資産や負債をすべて処分したときにいったいどのくらいの価格が付くのかという視点に立って資産を評価していく方法になります。

処分の時に有するであろう付帯費用は当然控除していくことで、実際にどうかを突き詰めていくのです。

会計上では正味実現可能価額ともいわれます。

生産や解散を予定していたり、ほかに転用の難しい不動産などの含みのある余剰資産を多く所有している企業を評価する際に有効です。

③ 財産評価基本通達を準用した時価純資産方式

これは完全に独立した評価方法ということが出来るでしょう。

財産評価基本通達と呼ばれる国税庁が通達している情報を活用し、貸借対照表に規定されている資産や負債を評価していく方式です。

国の客観的な数値ということで頭では納得できることが多いですが、実際に取引されている実態価格と乖離していることもあり、そんなことはないと口を出したくなるかもしれません。

相続税や贈与税を確定させる際にも活用される方式です。

注意すべき項目

時価純資産方式のどの種類のものを用いても必ず注意しておかなければならない項目が出てきます。

それについて簡単に説明しましょう。

① 売上債権・貸付金

回収可能性金額を時価評価していきます。

金融商品会計基準などを活用して、一般的に受け入れやすい金額へ納めていくことになるでしょう。

キャッシュフローを見積もる方法や財務内容を評価する方法などを活用して具体的に進めていきます。

② 有価証券・土地・建物

有価証券は似たような上場企業の状況から、土地や建物については公示価格や路線価などの不動産鑑定士や固定資産税を評価するときの手法を援用する場合があります。

これらの項目は中小企業では含み損化していることも多いため、適切な評価が難しい場合も多いのです。

③ 棚卸資産

時価評価の非常に難しいものです。

最悪、簿価を用いる場合もあるでしょう。

④ 機械や工場などのハード

ハード面を評価します。

再調達原価方式を活用することが一般的です。

また、旧式のものをメンテナンスし続けて使っているなどの場合は、減価償却の割合などからかなり減額評価することもあり得るでしょう。

M&Aにあたり工場閉鎖などを想定している場合は、除去債務を負債として織り込む必要が出てきます。

⑤ のれん

のれんは多くの場合、会計計上されていないのではないでしょうか。

無形資産として評価されますが、減損テストなどを実施していくことで深堀していくことになります。

あまりに広範囲となってしまう場合、最悪評価をあきらめる場合もあるでしょう。

⑥ 退職給付債務

M&Aにおいて、退職金というものは様々な問題を生み出すもので、扱いが非常に難しいでしょう。

十分な退職給付引当金などが計上されていればいいですが、それらも踏まえて十分に検討していく必要があります。

まとめ

M&Aにおいては、会社をどのように評価するかによって、必要となる現金なども含め、準備が大きく変わってきます。

あまり急ぐことなくしっかりと行っていくことが賢明です。