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「M&Aによる事業承継講座」その3

中小企業が行いやすい「承継」の仕方

中小企業が行いやすい「承継」の仕方

中小企業経営者や小規模事業主の人たちが、事業承継に際してとる方法として「親族内承継」、「親族外承継」、「M&Aによる第三者への承継」という3つの選択肢があることは、すでに「M&Aによる事業承継講座」その1で述べました。 今回は、3つのうちの「M&Aによる第三者への承継」で、中小企業、個人事業主が行いやすい方法について解説していきます。

M&Aのスキーム(手法)について

長年経営してきた会社を終わらせてしまうのはしのびないが、親族や従業員などで事業を承継できる人材がいない場合用いられるのが「M&Aによる第三者への承継」です。

一口にM&Aといっても、そのやり方、手法といったものにはさまざまなものがあります。そして、これらの手法のことを“スキーム”といいます

M&Aスキームは、その目的などにより、いくつかのパターンに分けていくとわかりやすいため、「M&Aによる事業承継講座」その2でも使った図をもとに見ていきます。

上の図で、中小企業や小規模事業者が多用するスキームとしては、図④の「株式譲渡」、⑤の「事業譲渡」です。

なかでも特に利用されているのが「株式譲渡」ですので、「株式譲渡」を中心に、解説していきます。

中小企業などのM&Aで最も利用されているスキーム「株式譲渡」

「株式譲渡」は、①の「合併」などのように法律によって明確にその内容が決められているスキームではありませんが、一般的には次のように定義されます。

「 株式譲渡」とは、売手側企業のオーナー経営者が保有している株式を、買手側企業に売却、買手側企業は、売手側企業の経営を支配する権利を取得し、売手側企業オーナーは、直接、多額の売却代金を受け取るもの。

「合併」や②の「会社分割」といったスキームが、会社法といった法律の厳格なルールに従って進められるのに対し、「株式譲渡」は、売手側・買手側企業双方による売買契約であり、両者の「売ります」、「買います」という意思の合致で、簡単に成約することができます。

「株式譲渡」のメリット

「株式譲渡」が、中小企業などのM&Aで盛んに利用されている理由は、そのメリットにあります。
具体的なメリットは次にあげるようなものです。

手続きが簡単

「合併」や「会社分割」、③の「株式交換・株式移転」といったスキームが、会社法による厳しい手続きを経て行わないと、M&Aの効力が生じないのに対し、「株式譲渡」は手続きが簡単です。

また、「株式譲渡」に次いで中小企業のM&Aで利用される「事業譲渡」でさえも、手続きにおいては煩雑な面がありますが、「株式譲渡」では、会社を対象とした株式の売買契約のみで有効になります。

会社の事業、従業員の雇用が守られる

「合併」などでは、M&Aの結果、売却された会社は直ちに消滅してしまいます。また、「事業譲渡」などでは、従業員との雇用契約はM&Aに際し、再度見直す必要があります。

これに対して「株式譲渡」では、売手側企業のすべての財産や負債、契約といったものをひとまとめにして買手側企業に移転します。その結果、従業員の雇用も守られ、会社の事業も買手側企業のもとで引き続き行われ、さらに発展することも期待できます。

オーナー経営者に多額の現金が入る

「株式譲渡」では、株式譲渡契約の当事者の一方は売手側企業オーナー自身ですので、経営者個人に多額の売却代金が入ってきます

これにより老後の生活費も確保できます。

ただ、「株式譲渡」には、決算書などではわからない「簿外債務」、税務面での「追徴課税」といったリスクがM&A契約後に出てくることもありますから、十分精査する必要があります。

「株式譲渡」以外のスキームについて

中小企業などのM&Aで「株式譲渡」に次いで利用されるのが「事業譲渡」です。

この「事業譲渡」は、複数の事業を営んでいる企業が、ある事業のみを切り離してほかの会社に譲渡するものです。

たとえば、不採算部門を本業から切り離し、売却したのちにその代金をもとにして本業に専念するといった「選択と集中」化の場合に有効なスキームです。

「株式譲渡」が会社すべてをひとまとめにして譲渡しなければならないのに比べ、実務的、実践的といえるものです。ただ、対象事業に関するすべての契約、行政許認可など、改めて締結したり取得し直す必要があります。

大がかりで煩雑なフローを要するM&Aのスキーム

そのほかにも、M&Aスキームとして「合併」が利用されますが、会社法の厳格なルールによらなければならず、またコストもかかることなどから、中小企業のM&Aではほとんど利用されません。

変わったものとしては図⑨の「合弁( JV)」があります。これは特定の目的のために協力関係にある企業が、出資して会社を設立するものです。

これら企業は各々独立したものであり、目的達成後には解散するものです。いま東京都心で盛んなゼネコン(総合建設会社)による、再開発事業などに見られるもので、これも広い意味のM&Aスキームの一種です。

まとめ

中小企業などの事業承継に際して行われるM&Aでは、「株式譲渡」と「事業譲渡」が多く利用されます。
そのため、これら2つ、とりわけ「株式譲渡」については、十分に理解しておく必要があります。