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「M&Aによる事業承継講座」その13

M&Aで会社の値段はどのように決まるのか

M&Aで会社の値段はどのように決まるのか

ひと昔前まで、M&Aは上場企業のような大企業を中心に行われてきました。 しかし、近年、少子高齢化による後継者難や人手不足により、我が国の企業の大多数を占める中小企業でも、事業承継のためM&Aを取り入れるようになってきています。 M&Aなどによって自社を売却したり、他社を買収する際、果たしてその対象となる会社をいくらで売るか、またいくらで買うかという、会社の値段の決め方には、どのようなものがあるのでしょうか。 今回は、会社の値段がどのように決められるのかといったことを中心に、述べていきたいと思います。

売手側・買手側、それぞれが考える会社の値段

まず、売手側が会社につける値段について見ていきましょう。

売手側からすれば苦労して創業し、その後もさまざまな苦難を経て現在まで続けてきた会社です。いい時期ばかりではなかったでしょう。

売上が激減したり、取引銀行から融資を打ち切られたり、取引先企業から取引を断られたり、腹心の部下にやめられたりしながらも、何とか乗り超え頑張って存続させ、手塩にかけてきた会社です。

また、特許権や自社ブランド、ノウハウ、独自の技術など知的資産・知的財産などもあるかもしれません。

このような無形の資産・財産も含めて評価する売却価格です。その売却の際には思い入れがこもった分、できるだけ高く売りたいと思うのも当然な話です。

売り手と買い手に温度差が大きいとブレイクする場合も

一方、売手側の主観的な評価に寄った売却価格の設定に対して、買手側は、あくまでも経営戦略・事業戦略の一環として考えているわけですから、その買収価格は、経済的な裏付けのある、客観的・合理的な評価による価格になります。

往々にして、実際の売買取引の場面では、このような客観的・合理的な価格を提示しても、売手側は自己の主観的な売却価格でなければ、なかなか応じようとしないこともあります。

買手側にとっては、何らかの必要性があるから買収に応じようとするわけですから、買収不成立となると、経営戦略上または事業戦略上に支障をきたし、その後の事業計画が思うように進展しなくなる可能性があります。

こうして決まる会社の値段

売手側の欲する売却価格に対し、買手側がその価格で買収を検討する時、自社の経営戦略・事業戦略上採算がとれるかどうかが問題になります。

仮に採算に合わなければ、それに応じた価格を再度提示し、今度は売手側がその条件に応じるか検討します。

こうしたプロセスの繰り返しの中で売買価格を絞り込んでいきます。

会社の値段を決める前提として、客観的・合理的な判断基準を算出する方法として、企業価値評価(バリュエーション)というものがあります。

次項では、その内容を簡単に確認していきます。

主な企業価値評価の手法

企業価値評価は、M&Aを行うため、あるいは株式増資に際して、そして相続する時の相続税・贈与税などの算定のためといった、それぞれの目的に応じたいろいろな利用手法があります。

その際、これらの手法を単独で行ったり、複数を組み合わせて行ったりと用途に合わせて使い分けたりします。

■「アセット(コスト)アプローチ」

会社の有する資産に着目したもので、「純資産価額法」などがある。
主に、成熟期以降になった会社を対象とした企業価値評価を行う場合に適している。

■「インカムアプローチ」

会社の収益やフリー・キャッシュフローなどの額を、一定の割引率で割引いた「現在価値」に着目したもので、代表的なものはDCF法などがある。
発展途上から成長期にある会社を対象とした企業価値評価を行う場合に適している。

■「マーケットアプローチ」

株式市場における株主価値、株式相場に着目したもので、「類似上場会社比準法」などがある。
上場している同業種の会社があり、比較がしやすい場合によく使われる。

こうした企業価値をベースに、具体的な会社の売却価格を決めるわけですが、この売却価格に客観的・合理的な判断基準といったものはありません。

マーケットアプローチの決定方式

一般的に利用されている売却価格の決定方法としては、「相対方式」と「オークション方式」と呼ばれる方法があります。こちらも簡単に解説しておきます。

■相対方式

売手側・買手側双方が1対1でその都度価格交渉するもの。
1対1で交渉するためマッチングしやすい反面、その価格の決定が妥当かどうか客観的な判断が難しいというデメリットが。

■オークション方式

複数の会社を対象として行うもの。
複数の価格を比較検討することができる反面、価格のみで判断してしまいがちになるため、会社や事業とのマッチングがうまくいかず、買収後の事業に支障をきたすリスクも。

まとめ

会社の値段というものは、売手側・買手側が欲する主観的な価格だけで決まるものではなく、また、企業価値評価による合理的な価格のみで決まるわけでもありません。

主観的・合理的な評価が相互に関連しあい、売手側・買手側が交渉を重ねていくなかで歩み寄り、両者の納得した会社の値段が決まっていくものです。