M&A事例集、続いては食品製造業です。食品製造業は衣食住というだけあり、人々の生活にはかかせないものですが、同時に人々の生活スタイルが変化していくことで業界全体が変化を求められる厳しい業界でもあります。この変化を乗り切れるかどうかがM&Aの注目となるようです。
食品製造業の動向や特徴
食品製造業は人々の生活スタイルの変化の影響を大きく受けます。
時代はインターネットを使った宅配サービスが注目されだしました。
一方で少子高齢化や諸外国との関係から、今まで堅調だった品物の需要が変化したり、関税や円相場の影響で仕入れ値が変動したりと数多くの変数が経営に影響を与えます。
そうした中でM&Aや事業再編を経て、事業を拡張したり事業継承をしたりとダイナミックな動きを起こす企業が増えてきています。
特に、販路拡大の観点を拡張して海外へ志向する企業や仕入れにおける規模の経済を活用したいと考える企業が目立つようになりました。
食品製造業界におけるM&Aのキーポイントは衛生や品質の管理と調達における安定性です。
調達においては得意な分野が異なってくるので一概には言えませんが、衛生管理や品質管理は今や絶対といえるでしょう。
東日本大震災以降の福島県産の扱いなどを挙げるまでもなく、人々の安心志向は強まってきているからです。
一方で、食品製造業界の経営者は高齢なことが多いといわれています。
後継者の問題が業界全体の問題ともなっているのです。
食品製造業におけるM&A事例:背景
今回は、3代にわたって続く老舗企業のお話です。
老舗企業ということで、その歴史にあった信頼関係やブランド力を持っており、業績は長年にわたって堅調であったといいます。
しかし、様々な環境の変化によりM&Aを志向するようになりました。
一つ目が後継者不足。
御子息も少なかった現経営者は、ほかの親族を見回しても後継者として頼む人材が見つかりませんでした。
社内の人材も金融機関からの借入金に対して個人保証という大きな壁があり、具体的な後継者が出てこなかったといいます。
もう一つの理由として成長性というものがありました。
過去の設備投資の際の借入金の返済が重く、十分なキャッシュを確保することが難しかったのです。
このキャッシュの問題を解消できれば会社はまだ成長できる。
そう考えた経営者は、資金力がある会社とM&Aをおこすことで、必ず経営はさらに上向くと確信していました。
食品製造業におけるM&A事例:進め方やポイント
このM&A案件では、経営者のM&Aをしたいという思いが非常に強く、それが行動力や結果に大きくメリットとして出てきました。
買い手候補先リストに現れた企業に対して一社一社、経営者自身が足を運んで状況を確認していたのです。
また、買い手に求める条件も資金力とシナジーという明確なポイントがありました。
こうしたわかりやすさは買い手側の意思決定も促すことが出来ます。
手を挙げた買い手先は、この会社のブランド力を高く評価していました。
何十年と続いた売り手側企業の信頼性や仕入れに対する力なども非常に評価していたのです。
M&Aを進めるにあたって、こうした先入観などは相思相愛としてよい状況に進みます。
交渉もスムーズに行われ、M&A打診からわずか1か月というハイペースでM&Aの契約が成り立ちました。
食品製造業におけるM&A事例:効果
このM&Aでは多くの問題が解決されました。
後継者については、買い手側企業から候補者が送られ、会社自体の存続も問題なくなりました。
個人保証については、買い手企業へ移譲する形で現経営者の個人保証を解除したのです。
こうして、事業継承に当たっての問題点はスムーズに解消されました。
会社の成長については、M&A前に試算した通り、シナジーを存分に発揮することになります。
まず、買い手側は売り手側が持っていた販路や仕入れ先との関係性を強め、さらに資源効率の良い商品を売り出すことに成功しました。
特に、原材料費を抑えることで、ライバル企業に対しての競争力も強くなったのです。
また、人材交流も活発になり、新商品の開発や総務の効率性が高まるなどのメリットも甘受できました。
まさに理想的なM&Aといえるでしょう。
まとめ
今回のM&A事例のキーワードは「社長の決断」でしょう。
売り手側の経営者は早い段階でM&Aしかないと決め打ちをしていました。
この決断が、フットワークの軽さや交渉の強さに影響を与えたのです。
そして、そうした姿勢が買い手側の信頼を獲得し、素晴らしいM&Aとなったのです。
事業継承とは、社長の心づもりで様々な状況が出てきます。
まずは第一歩を。
早いうちの決断は、その後の行動や時間に大きな影響を与えるのです。