M&A事例集。続いてはソフトウェア開発に関する事例です。ソフトウェア開発の業界でもM&Aは非常に活発。考え方が斬新な経営者も多く、今までのやり方に頓着しないため新しい方法をどんどん試していくという会社もよく見られます。そのため、M&Aという手段で会社を大きくすることもあまり抵抗がないようで、進めるのであれば積極的に進めていくというのが業界全体の傾向としてあるようです。
ソフトウェア開発業の動向や特徴
業界自体の歴史は比較的新しく、1975年以降に設立した会社が最も古いといわれるレベルです。
新陳代謝も活発で、いい会社と悪い会社がすぐに入れ替わります。
ただし、国内企業のIT投資意欲は、海外の企業と比べてもかなり低く、IT技術だけでは成り立たない苦しい経営状況が見え隠れしている業界です。
IT業界において、あるいはソフトウェア業界においては、超巨大企業を除き、技術力の多くを個人の力量に頼っているといわれています。
そのため、M&Aによる人材確保は非常に有用であり、こうした優秀な人材や組織に注目したM&Aが非常に多く見られます。
また、取引先との関係やどの業界のソフトウェアに強いかなどの問題もM&A成功に大きな影響を与える傾向にあるのです。
ソフトウェア開発業におけるM&A事例:背景
さて今回は、創業25年以上、製造業からスピンアウトしてできたソフトウェア開発企業のM&A事例を見ていきましょう。
4人の創業メンバーで今後の計画について話し合う必要が出てきました。
というのも、メンバーの一人が大病を患ったためです。
4人の年齢はすでに60を超え、そろそろリタイアという年齢に差し掛かっていました。
このタイミングで4人とも会社を離れるのがいいのではないかという結論に至るも、後継者というのがいまいちピンとこず、すぐにM&Aによる事業継承が議論の的となったのです。
こうした交渉が上下関係なく行われたのは、仕事が終わった後もいい関係でいたいと4人が考えていたのが原因でしょう。
やはり、M&Aや会社の経営という話の中では大きなお金が動くため、このお金で人間関係が崩れていくことがよくあるのです。
さて、M&Aの選択には同意したものの、どういった条件で買ってもらうのか、引き継ぎ条件や現在の雇用をどうするのかなどの細かい部分で完全に一致することはなく、それならばまずコンサルタントに相談して、相手との交渉の中からいい条件のものを選択しようという結論に至りました。
ソフトウェア開発業におけるM&A事例:進め方やポイント
今回のM&Aでは、条件、とりわけ譲渡価格というお金の面で難しさを抱えていました。
そこで、相手先の選定を入札という形にしたのです。
従業員の雇用や今までの取引先には迷惑をかけないことは当然の条件でした。
この一見お金でしか見ていないともいえる「譲渡価格」に条件を固定したことが吉と出ました。
当初予想していた金額よりも高い入札額を提示してきた企業が現れたのです。
この企業は一部上場のソフトウェア最大手の1つともいえる会社であり、M&A先としてはまさにパーフェクト。
この大手企業は医療関係のソフトウェア開発のノウハウをもつ会社を探しており、今回の会社の技術力や人材に目を付けたのでした。
ソフトウェア開発業におけるM&A事例:効果
意思決定において4人もの創業者がいるということで、意見が分かれるかに思われたM&Aですが、「譲渡価格の最も高いところからM&A交渉を行う」という大原則のもと、交渉は非常にスムーズに行われました。
結果として、M&Aは大成功。
ちなみにこのソフトウェア開発会社の技術力は優れており、特に医療関係の開発では専門性を活かしたビジネスを進めていたため入札希望者がかなり多く存在したことも成功につながったと考えられます。
まさに、M&Aによる事業継承のメリットが最大限に活かされた事例といえるのではないでしょうか。
まとめ
今回のM&A事例は、会社の技術力と経営陣の決断力が大成功につながった事例でした。
先述した通り、M&Aというのは大きなお金が動きます。
また、多くの場合、自分の仕事人生の多くをつぎ込んだ会社という存在を手放すというのは、感情という点からしても割り切ることが非常に難しいものです。
多くの会社にとって、自分で畳むのか継承するのかという選択肢があるというだけでも十分にその会社をその経営陣が成功させたということを端的に示しているのではないでしょうか。
しかし、感情に浸ってしまい決断を鈍らせてはいけません。
失敗しない事業継承のためにもぜひ今まで通りの優れた経営決断をしてください。