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「M&Aによる事業承継講座」その17

最終譲渡契約書の記載事項

最終譲渡契約書の記載事項

「最終譲渡契約書」は、様々な契約条項があります。 ここでは、その一般的な重要条項を中心に見ていきましょう。

最終譲渡契約書作成の流れをおさらい

株式譲渡による M&Aでは、デューデリジェンス(Due Diligence)が終了したあと、売手側・買手側双方による売買意思の確認をします。

売買条件が決定したら、すぐに「最終譲渡契約書」の作成へと進みます。

「売買譲渡契約書」のフォームはM&A仲介業者などが作成。その内容を売手側・買手側それぞれの当事者が検討し、最終的に弁護士などによる確認といった流れになります。

最終譲渡契約書の記載事項は?

最終譲渡契約書は、様々な契約条項からできています。

なかでも重要な契約条項として、「表明保証条項」、「遵守条項」、「前提条件」、「補償条項」、「売買条件」といったものがあります。

これら5つについて見ていきます。

表明保証条項

「表明保証条項」とは、売手側・買手側双方がそれぞれ相手に対して、一定の事項が真実で正確であることを相手側に表明して保証する契約条項のことです。

この表明保証条項は、特に売手側から買手側へのものが重要になります。

なぜならば、買手側のデューデリジェンスによって精査できる事項には限界がありますので、すべての事項が、必ずしも明らかになるとは限りません。

そこで、この売手側からの表明保証条項で、想定していないリスクを担保するというわけです。

この条項に関する訴訟も多いため、最終譲渡契約書の中でも、特に重要な事項とされています。

遵守条項

「遵守条項」とは、売手側または買手側がM&Aの最終過程で、相手に対して守るべき契約条項のことです。

主なものとしては、最終譲渡契約日からクロージング(決済)の日前後までの間における、重要な経営判断や資産の処分の禁止を定めるものです。

例えば、あらたな増資、借り入れや重要な契約の締結、クロージング後に同種の営業を禁じる競業避止条項、クロージング後の円滑な業務の引き継ぎなどを定めた条項があります。

補償条項

補償条項とは、表明保証条項や遵守条項に違反した場合の損害賠償について定めたものです。

契約条項に違反した場合、債務不履行による損害賠償責任を負うなどの民法上の規定を適用したものです。

ただし、損害賠償額を算定することが難しい場合もあるため、あらかじめ損害賠償を推定する規定を加えておくこともあります。

前提条件

「前提条件」とは、ある条件が満たされない場合、株式譲渡によるM&Aのクロージングは実施しないといったことを前もって条件として規定しておくことです。

この条項は、相手への精神的プレッシャーにより一定の行為を促す効果があります。

前提条件としてよく規定されるものとしては、次のようなものがあります。

独占禁止法(私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律)上の届出の完了

独占禁止法では、株式譲渡に際し、買手側企業の国内売上高が200億円超で、売手側企業の国内売上高が50億円超の場合、公正取引委員会への事前届出が必要となります。

行政上の許認可および届出の完了

一定の業務を行うには、行政上の許認可の取得や届出が必要となります。

したがって、クロージングまでにこうした許認可取得や届け出が完了していることを前提条件とするものです。

後発事項が存在しないこと

買手側企業のM&A後の事業計画や財務に、重大な悪影響を与えるリスクが存在しないという前提条件のことです。

偶発債務や想定外のリスクなどについては、表明保証条項や遵守条項でも同様の趣旨の規定があります。

しかし、ある特定の事項についてのリスクなどを別途強調しておく必要がある場合に、「前提条件」として重要な構成要素となり得ます。

価格調整条項

売手側・買手側の間で価格交渉がまとまらず、最終局面にまでおよんだ場合、後発的事情を考慮して売却価格を見直す旨を定めた条件です。

以下のようなケースがあります。

⚫︎全体的に価格調整するケース
⚫︎特に価格調整を行わないケース

また、価格調整の方法には次のようなものがあります。

⚫︎差額の精算を行う場合
⚫︎譲渡価格の分割払いによる方法
⚫︎譲渡代金をエスクロー(第三者への預託)する方法

ただ、表明保証条項、遵守条項、補償条項などが実質的な価格調整機能を担っているため、通常は価格調整を行わない場合が多いようです。

そのほかの構成要素

「役員・従業員に関する条項」、「費用負担に関する条項」、「訴訟の場合の準拠法・裁判管轄に関する事項」、「秘密保持に関する事項」、「通知や公表に関する事項」等いろいろな条項があります。

まとめ

今回は、最終譲渡契約書の具体的な記載ということで、細かい内容になってしまいましたが、このように様々な契約条項があります。

クロージング後に問題が起こらないよう、慎重に作成する必要があります。

そのため、自社の事業担当、経理担当者、法務担当者だけでなく、外部から弁護士や税理士・公認会計士などの専門家の指導を受けながら作成するのがベストです。