会社の評価は様々な方法でとらえることが出来るということを学んできました。ここでは、3つの代表的な手法の最後の手法である類似会社比較方式についてみていきましょう。
類似会社比較方式の概要
非上場の中小企業というのは、よく考えてみると市場から評価されていないため価格がついていません。
しかし、ほかの会社と完全に異なっている唯一無二の会社であることもほとんどないでしょう。
そうした観点から、上場していて分野やキャッシュフロー構造などが似ている企業をピックアップし、それらと比較しながら価額を確定させていく評価方法が類似会社比較方式です。
完全に同じ、上位互換的な企業もないため、100%当てはまるわけではありませんが、それでも分野や扱っている商品の形態などから評価することが出来ます。
こうした評価方式は、もしかしたらM&Aコンサルタントの腕の見せ所といえるかもしれません。
また、こうした手法は、マーケット・アプローチとも呼ばれています。
類似会社比較方式における選定
類似会社比較方式におけるもっとも重要なポイントでもある、比較会社の選定について少し見ていきましょう。
事業の類似性や財務構成などを分析しながら類似企業を決定していきます。
7~10社程度をピックアップするのが一般的でしょう。
あまりにも少ない場合は、類似会社比較方式による会社評価を断念する場合もあります。
- 商品やサービスの類似性
- 規模の類似性
- 成長性の類似性
- 資本構成や財務構造の類似性
このような類似性を軸に企業をピックアップします。
ほかにも、地域に強い製品などを扱っている場合や、新商品の開発スピードなどを強調していく場合もあり、会社の独自性をどこまで評価していくのかという点が注目の的になるでしょう。
ただ、こうした独自性の協調は同時に類似公開企業の存在を否定することにもつながります。
ビジネスにおいて独自性というものがそのまま力になることはよくあることですが、ここでは会社をどう評価していくのかという実務的な問題になるのです。
このことを忘れてしまうと、どんなケースであっても「類似していない」と言い張ってしまうこともよくあるでしょう。
しかし、今回の場合はM&Aをするための土台作りです。他者と戦うわけではありません。
あまり厳密に線引きしてしまっても、メリットは少ないといわざるを得ないでしょう。
類似会社比較方式の調整と算出
類似会社の選定が終了すると、次にやることは、財務諸表の調整です。
会計方針が違う場合や配当等のやり方が異なっている場合など、できる限り財務諸表などの簡単に入手できる情報の切り口を変えていきます。
こうすることによって、比較がよりやりやすくなるため、数値が現実に近くになっていくでしょう。
基本的に、M&Aを行うという場合は、ほぼほぼ財務デューデリジェンスを実施するため、相手の会社自分の会社それぞれ比較しやすい形のものも作っておくといいのではないでしょうか。
こうして、財務諸表を調整したら、数値を算出していくことになります。
算出に使われる数値は主に倍率。
また、分母と分子の関係に気を付けながら数字を見ていくことになるでしょう。
算出された倍率を活用していくうえで必ず確認しておくべきことがあります。
- 使われている数字が平均値なのか中央値なのか必ず確認する
- 比較対象が複数業種の事業展開していないか確認する
- 事業なのか株式なのか、価値のベースを整える
- 適用される時期について
これら4つのことは、算出が終わりすべての数値が出そろった後も確認していく必要があるでしょう。
価値のベースについては、これを間違えるととんでもない数字が出てきてしまうので一目でわかると思いますが、適用される時期についてはわからないことが多いのではないでしょうか。
好景気に入りだしたときと、好景気が終わったときとでは環境は全く違いますが、意外と出てくる数字が同じようなものだったりします。
こうした数字に関する直観力を普段から養っておくと、数字が命となる事業計画やM&A計画などで非常に役に立つでしょう。
まとめ
類似会社比較方式は、お願いするコンサルタントによっても様々に異なった会社を選定してくる時があります。
これは、注目すべき点が異なっているためともいえるでしょう。
失敗しないM&A・事業継承を行っていくうえでは、コンサルタント選びが非常に重要になってきます。
特にこうした会社の価値評価という、売却額やその後のやり取りに影響を与えかねないような重要な数値算出に関しては慎重に行うべきです。
M&Aの予算が許す限り、できる限り多くの情報を手に入れて、決断の役に立ててください。